結論
いま求職者は、商品やサービスと同じように、仕事や企業についてもSNSで情報を集めています。ですから、求人媒体に掲載して応募をお待ちになるより、求職者が普段いる場所で接点をつくるほうが先です。SNSで企業を知り、求人媒体や採用サイトを確認し、場合によっては口コミや社名検索を経て応募する。応募までの動線は、このように複雑になりました。やることは4つです。
- ①採用ペルソナを書く
- ②接点を棚卸しする
- ③出すコンテンツを決める
- ④応募導線を1本つなぐ
マーケティングでいうCVを応募、受注を内定承諾、獲得単価を応募単価に置き換えれば、いま使っている型がそのまま動きます。予算をかけずに始められ、最初の30日で現状把握からコンテンツ3本の決定までは終わります。
この記事で分かること
- 応募までの動線がどう変わったか
- 求職者が応募前に見ている3か所と、自社の採点方法
- マーケティングの型を採用に移す4ステップ
- マーケティング部門と採用担当の分担の決め方
目次
| 段階 | 10年ほど前 | いま(2026年) |
|---|---|---|
| きっかけ | 求人媒体で求人を見つける | SNSで企業や働く人を知る |
| 確認 | 掲載されている情報を読む | 求人媒体や採用サイトで条件を確認する |
| 裏取り | とくになし | 口コミサイトを読む。社名で検索する |
| 応募 | そのまま応募する | ここまで通過して、ようやく応募する |
| 企業側の姿勢 | 掲載して応募を待つ | 普段いる場所に接点をつくりに行く |
求職者の時間は、求人媒体ではなくSNSにあります
転職活動をしている期間は、人生のなかではごく短い時間です。求人媒体を開くのは、その短い期間のなかの、さらに限られた時間だけです。一方で、SNSは日常のなかにあります。通勤中も、休憩中も、寝る前も開きます。
そして今は、商品やサービスを選ぶときだけでなく、仕事や企業についてもSNSで情報を集めることが一般的になりました。気になる会社があれば、社名で検索する前に、まずSNSで働いている人の投稿を探します。
この2つを重ねると、見えてくることがあります。企業が求職者と出会える可能性がもっとも高い場所は、求人媒体ではありません。求職者が普段いる場所です。
応募を待つのではなく、接点をつくりに行く
求人媒体は「掲載して、応募をお待ちする」という設計になっています。この設計が機能するのは、求職者が媒体を見に来てくださることが前提です。前提が変わってしまえば、原稿をどれだけ磨いても届く相手は増えません。
媒体の原稿を書き直しても応募が増えないのは、原稿が悪いからではありません。原稿を読んでいただく前の段階で、出会えていないからです。
必要なのは、求職者が普段利用しているSNSで接点をつくることです。ここはマーケティングの発想がそのまま使えます。買っていただくために、お客さまがいる場所に接点を置く。採用でも同じことをします。
媒体をやめるという話ではありません。媒体は、接点を持った方が条件を確認しにいらっしゃる場所として、いまも機能しています。役割が「出会いの場」から「確認の場」に変わったと捉えてください。
応募までの動線が複雑になりました
表1のとおり、応募までに通る場所が増えました。SNSで企業を知り、求人媒体や採用サイトで条件を確認し、口コミサイトを読み、社名で検索する。ここまで通過して、ようやく応募という行動に至ります。
この変化は、購買行動で起きたことと同じです。広告をご覧になった方がその場で買わず、検索して、比較して、レビューを読んでから買うようになりました。採用でも同じことが起きています。だからこそ、マーケティングで使っている考え方が、そのまま使えます。
動線が複雑になったということは、途中で離脱する場所も増えたということです。どこかが空っぽだと、そこで止まります。求職者をWebマーケティングで母集団形成する方法もあわせてご覧ください。
求職者が応募前に見ている3か所
動線のなかでとくに見られている場所は3つです。自社がどう見えているのか、今からご確認いただけます。
1. SNS
求職者がご覧になるのは、会社の公式発信よりも、そこで働いている人の投稿です。誰が働いていて、どんな仕事をしているのかが見える状態かどうか。投稿がない会社は、実在している感じが伝わりません。
2. 社名検索の結果
自社名で検索したときに、上から何が並ぶでしょうか。公式サイトの次に何が出てくるでしょうか。転職口コミサイトが上位に来ることがあります。ここに自社の発信が何もなければ、判断の材料は口コミだけになってしまいます。
3. 口コミと評判サイト
書かれている内容は変えられません。変えられるのは、口コミ以外の情報が同じ場所にあるかどうかです。口コミしかない状態と、口コミと自社の発信が並んでいる状態では、受け取られ方が変わります。
| 見られる場所 | 確認の方法 | 合格ライン | 自社の状態 |
|---|---|---|---|
| SNS | 会社名でInstagramとXを検索する | 直近3カ月に投稿がある | [ ] |
| 働く人の顔 | 採用サイトとSNSを見る | 実名または顔が出ている社員が3人以上 | [ ] |
| 社名検索の結果 | シークレットウィンドウで自社名を検索する | 1ページ目に自社が発信した情報が3件以上ある | [ ] |
| 採用サイト | スマートフォンで開く | 応募ボタンまで3タップ以内 | [ ] |
| 口コミサイト | 自社名と口コミで検索する | 口コミ以外の自社発信が同じ検索結果に出る | [ ] |
空欄を埋めてから、埋まらなかった行を上から直していきます。全部やろうとせず、SNSから手を付けてください。動線のいちばん上にあるためです。
マーケティングの型を採用に移す4ステップ
ここから先は、いま使っている型をそのまま持ち込みます。用語を置き換えるだけです。
| マーケティング | 採用 | 置き換えると何が見えるか |
|---|---|---|
| リード | 応募者 | 連絡先を得た段階です。ここから選考が続きます |
| CV(Web上の計測地点) | 応募 | Webで計測できるのは応募までです。ここをゴールに置くと、その先が見えなくなります |
| 受注 | 内定承諾 | 本当のゴールはここです。応募から承諾までの離脱を必ず見ます |
| 獲得単価(CPA) | 応募単価 | 1件の応募をいただくためにかかった費用です |
| 受注単価(CPO) | 採用単価 | 媒体費だけでなく、面談にかけた時間も原価に入ります |
| ペルソナ | 採用ペルソナ | 職種ではなく、今どこで何に困っている方かで書きます |
| リードナーチャリング | 候補者との関係構築 | 今すぐ転職なさらない方を、切らずに残します |
| ランディングページ | 採用サイトと求人原稿 | 応募ボタンまでの導線が1本になっているかを見ます |
ステップ1. 採用ペルソナを書く
職種名では書きません。今どこで何に困っている方なのかで書きます。前職はどこで、なぜ辞めようとなさっているのか、何を優先して次を選ばれるのか。マーケティングでペルソナを書くときと同じ粒度にしてください。採用担当が持っている面談メモが材料になります。
ステップ2. 接点を棚卸しする
そのペルソナが日常的にご覧になっている場所を洗い出します。SNS、業界メディア、求人媒体、知人からの紹介。全部に手を出さず、上位2つに絞ってください。マーケティングでチャネルを絞るのと同じ判断です。
ステップ3. 出すコンテンツを決める
接点ごとに、出すものを決めます。ここで多くの会社が「社員インタビュー」から始めて止まってしまいます。先に出すべきなのは、応募を迷っている方が知りたいことです。1日の流れ、評価のされ方、入社後3カ月で何をするのか。これらは会社側が書ける情報で、他社と重なりません。
ステップ4. 応募導線を1本つなぐ
コンテンツをご覧になった方が応募に至るまでの動きを、1本にします。記事の下に応募ボタンがない。SNSのプロフィールに採用ページのリンクがない。この2つはよくあります。マーケティングのランディングページで当たり前にやっていることを、採用でもやります。
マーケティング部門と採用担当が組むときの分担
揉める原因は、追っている数字が違うことです。マーケティングは応募数を増やそうとし、採用担当は面談の質を上げようとします。応募が増えて面談が回らなくなると、採用担当の側から止まります。
先に決めるのは、どちらが何を持つかです。おおまかには、応募が発生するまでをマーケティング、応募後を採用担当とします。ただしコンテンツは両方が関わります。採用担当が材料を出し、マーケティングが形にする分担が回りやすいです。
予算は、採用予算から出すのか、マーケティング予算から出すのかを先に決めてください。決めないまま進めると、効果が出たときに手柄の話になり、出なかったときに責任の話になってしまいます。どの数字を追うかについては、採用マーケティングで追うべきKPIで整理しています。
最初の30日でやること
| 週 | やること | 誰が | 完了の条件 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 表2のチェックリストを埋める。SNS、働く人の顔、社名検索、採用サイト、口コミを実際に見る | マーケ担当 | 5行すべて埋まっている |
| 2週目 | 採用ペルソナを1人分書く。採用担当の面談メモを材料にする | マーケ担当と採用担当 | ペルソナが1枚できている |
| 3週目 | 接点を上位2つに絞り、出すコンテンツを3本決める | マーケ担当と採用担当 | コンテンツ3本のテーマが確定している |
| 4週目 | 応募導線を1本つなぐ。記事から応募ボタンまでを通す | マーケ担当 | 導線が通っていることを実機で確認できている |
30日後にご覧いただく指標は3つです。社名検索の1ページ目に自社の発信が何件出るようになったか。採用サイトの応募ボタンまでの離脱率。応募経路の内訳。応募数そのものは30日では動きにくいものです。何をいつ見るのかを、着手される前に社内で共有しておいてください。
すぐに応募が必要な場合は、順番が変わります
ここまでご紹介した内容は、SNSへの投稿と、社名検索の結果を整えることが中心です。どちらも費用はほとんどかかりませんが、成果が出るまでには時間がかかります。中長期の施策だとお考えください。
一方で、来月までに応募を集めたい、今期中に何名採用したいといった短期の課題をお持ちの場合は、順番が変わります。投稿が届くのを待つより、広告で先に接点をつくるほうが早いです。求職者が普段いる場所にそのまま出せるためです。とくにショート動画は、いま求職者の時間がもっとも集まっている形式です。
広告には、費用がかかり続けるという性質もあります。出稿を止めれば接点も止まります。ですから、短期は広告で確保しながら、中長期の土台をこの記事の4ステップで並行してつくる。この2本立てが現実的です。
よくあるご質問
QどのSNSから始めればよいですか。
A採用ペルソナが日常的にご覧になっている場所から始めてください。全部に手を出すと更新が止まります。上位2つに絞り、3カ月続けてから追加をご検討ください。
Q採用のためのSNS運用は、誰が担当すべきですか。
A材料と構成をつくるのは採用担当、投稿や記事の形にするのはマーケティングという配分が回りやすいです。採用担当が面談で聞いた内容をお渡しし、マーケティングが形にします。採用担当に運用まで任せると、面談と両立できずに止まってしまいます。
Q効果が出るまでどのくらいかかりますか。
A30日で動くのは、社名検索の結果に出る自社情報の数と、応募導線の通り方です。応募数は、求職者が応募をご検討になる期間を挟みますので、より後になります。着手される前に、何をいつ見るのかを社内で決めてください。
Qすぐに応募を増やしたい場合はどうすればよいですか。
ASNS広告をご検討ください。投稿が届くのを待つより早く、求職者が普段いる場所に接点をつくれます。ただし出稿を止めれば接点も止まりますので、この記事の4ステップは並行して進めてください。
Q求人媒体はやめてよいですか。
Aやめないでください。媒体は、接点を持った方が条件を確認しにいらっしゃる場所として機能しています。変わったのは、媒体だけで決まらなくなったことです。媒体は残したまま、応募前に見られる場所を整えてください。
Q予算がない状態でも始められますか。
A始められます。この記事の4ステップは、既存のサイトとSNSアカウントの範囲で実行できます。費用が必要になるのは、コンテンツ制作を外部にお願いする段階と、広告を出す段階からです。
まとめ
求職者が求人媒体を見ている時間は、日常的にSNSをご覧になっている時間に比べれば、ずっと限られています。そして今は、仕事や企業についてもSNSで情報を集めることが一般的になりました。ですから、掲載して応募をお待ちになるのではなく、求職者が普段いる場所に接点をつくりに行くほうが先です。
SNSで企業を知り、求人媒体や採用サイトで条件を確認し、口コミや社名検索を経て応募する。応募までの動線はこのように複雑になりました。やることは4つです。
- ①採用ペルソナを書く
- ②接点を棚卸しする
- ③出すコンテンツを決める
- ④応募導線を1本つなぐ
マーケティングでいうCVを応募、受注を内定承諾、獲得単価を応募単価に置き換えれば、いま使っている型がそのまま動きます。最初の30日で、現状把握からコンテンツ3本の決定までを終えてください。すぐに応募が必要な場合は、広告で短期の接点を確保しながら、この4ステップを並行して進めてください。